後継者に育てるべくスカウトしたY君
私が横川(仮名)という青年に出会ったのはホテルの近所のセブンイレブンであった。近所には幾つものコンビ二があったが、そのセブンは清水というマネージャーがおり、とても気さくな人で馬が合ったのだ。
サービス業という仕事がら、ついつい従業員の仕草など観察してしまう癖で、どのコンビ二の従業員がしっかり仕事をしているかなど観察していた。
この清水というマネージャーの下、深夜勤務で働いていたのが横川君だ。彼はまだ18になったばかりだったが、小太りには似合わず素早い動きでレジ処理をする。客が少しでも並ぶと動きが早くなるのだ。見ていて実に気持ちの良い働きぶりだった。
従業員が揃い、何事もなく経営できる体制の時は買物に寄るついでに清水さんの誘いでセブンの事務所で休憩したりもしていた。そのせいでこの若い横川君とも話をするようになっていた。
私は露骨な引き抜きはしない。そういう手法は邪道だという信念があったからである。卑怯な手を使ってでも他店の従業員を引っこ抜くなど手法に構わぬやり方は私の流儀ではない。正攻法、王道を行くというのが自論であった。
清水さんが休みのとき、何度か横川君と話す機会があり、その度にいろんなアドバイスを彼にしていた。半年も経つ頃にはマネージャーの清水さんと三人で飲みに行くようにもなっていた。
そして、ある晩、突然携帯が鳴った。横川君からだった。「社長、申し訳ありませんが、○○警察署へ乗せていっていただけないでしょうか?」??「どうした?」と聞くと、彼の父が遺体で発見されたというのだ。ショックだったが、「今、すぐ行く」と車で飛び出した。
身元確認のためである。横川君の父は近くで農機具販売の会社を経営していた。折からの不景気で会社は借金まみれだったどうだ。傷が深くならぬうちに止めるように妻が諭したらしいが、50過ぎの父親には進路を転換する勇気が無かったのだろう。無理もないと思う。長男の横川君をはじめその下に弟と妹がいたのである。
子育てが終わるまでもう少しという気持ちと、それまで何とかやってきたという自負、それに商売変えする不安など、総合して考えるならば横川君の父の選択は理解できるものであった。
だが、それが仇になってしまったのだ。結局、息詰まって相談する相手も無く、自殺という最悪の道に嵌ってしまったのだ。
気の毒な横川君を励ますのは簡単なことではない。しかし、長男として彼は実にしっかりしていた。
父親を葬った横川君が私の会社に入ったのはそれから間もなくだった。
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